増資は株の希薄化を生み、増資をした銘柄は殆ど売られる。ただ中には増資が積極的な投資と見られて上げる銘柄もある。悪い増資、良い増資、攻めの増資を見て行こう。
当面の運転資金であるJR西日本の増資は悪い増資。
JR西日本の株価が9月の増資発表以来冴えない。JR西日本も「今年度も 1600 億円の社債発行やコミットメントラインの設定等、当面の事業運営に必要な資金は十分に確保しております」と説明はしている。「1600億の社債を発行してるやん、増資と変わらないやん」と言う突っ込みは置いといて、資金ショートによる増資じゃないよと言う説明だと思う。ただ実際はこの増資は当面の運転資金と見てよいだろう。コロナ過で仕方ないとはいえこれは悪い増資だ。
既存の製造設備では供給が需要に追い付かないため新建屋建設のSUMCOの増資は良い増資。
SUMCOの株価は増資を発表してもジリジリと上がっている。旺盛な半導体需要を満たすため新建屋を建設するための増資である。SUMCOも「顧客に対する供給責任を果たすために顧客の需要に応じた段階的な増産を適切に実施する方針を継続してまいります」と説明している。良い増資と言って良い。ただ気になるのは「段階的な増産」と言う文言だ。逐次増産も視野に入れていることだ。次の増産の為にはキャッシュを貯める必要がある。キャッシュがないとまた増資と言う事も考えられる。それに「従来より高精度、高性能且つ高価格の製造加工装置及び検査装置等の関連設備を導入する事が必要となります」とも言っている。 競争に勝ち抜くためには高価格の製造装置が必要なのだろう。幸い半導体需要が旺盛なため価格転嫁は容易だと思う。ただ競争相手は信越化学だキャッシュも潤沢、技術も一流だ。ただ信越化学と勝負するためには生産量と技術で負けるわけにはいかないので、良い増資と思って良い。
自社の予想をはるかに超えた需要と早い経営判断によるフェローテックの増資は攻めの増資。
フェローテックの株価は飛ぶ鳥を落とす勢いで上がっている。フェローテックは22日、約485万株の公募増資を行うと発表した。手取り概算額の約223億円は、中国で展開する半導体装置関連工場などへ投資する。たかだか223億位なら銀行で借りてもよかったと思うが、それでは機動的な経営が出来ないのだろう。そして自社の時価総額と発行株式数ならこなせる増資だろうと思っての増資だと思う。 攻めの増資と言える。もちろんこれくらいの増資ならフェローテックはびくともしない。会社は普通、増産や設備投資の予算を組んでいて、予備費も組んでいる。フェローテックの場合だと自社の予想はるかに超える需要とアイデアがあったのだろう。「増資分は株価の値上がりでお返しします」と言う自信もあるのだろう。フェローテックも「本資金調達の実施により、機動的な戦略投資を可能とする財務柔軟性を確保し、今後も拡大が見込まれる半導体等装置関連市場および電子デバイス市場におけるリーディングポジションを確立し、中長期的な企業価値の向上へと繋げてまいります。」と説明している。ジャスダック銘柄なのに半導体のリーディングポジションを狙ってきている。攻めの増資と言ってよい。